ここでは(Magic Formula提唱のProf. Pacejkaに従い)、SAE International 標準のJ670eで定義された座標系で話を進めています。SAE J670eの最新改訂版はこちら。(2019年5月現在)→ Vehicle Dynamics Terminology
(タイヤの向きと、その時の進行方向の向きが一緒とは限らないからね。)
例えば、縦力(Longitudinal force, Fx)はこの座標系でx軸方向、横力(Lateral force, Fy)はy軸方向に生じる力のこと。
● (self-) Aligning torque(アライニングトルク)
z軸まわりに生じるモーメントで、コーナリング時にはスリップ角を小さくする方向に働く。荷重とスリップ状態(スリップ率κとスリップ角α)、キャンバー角(γ)によって常に変化するもの。(実務的な話をすると、ESCの開発などの際にこういう値を考慮することになる。)
● Pneumatic trail(ニューマティック トレイル)
1文で表現すると「横力の作用点とタイヤの接地面の中心間の距離」になるけれど、その前に横力の作用点について考えるべきだろう。タイヤの接地面(contact patch)がどんな状態かを考えると、通常の運転状態では粘着域(adhesion)が大半で、それに対するスリップしている領域は少しだけ。接地面全体に方方の力が生じているわけだけど、ベクトルの合計を考えると横力の作用点が接地面の中心点よりも後ろにずれることがイメージできるはず(下の図の通り)。この差(距離)をPneumatic trailと呼んでいる。こんな値を知ったところで何になるんだ?って思う人も多いかもしれないけれど、これはMagic Formulaを使ううえでは欠かせない値。元々、セルフアライニングトルクは独立して考えられていた値だったけれど、Pacejkaによる研究(1996年)で、セルフアライニングトルクがこのニューマティック トレイルの関数として横力との式で表せられるようになったから。